■旅と旅行
1.旅と旅行の微妙な違い
2.ふれあいを求めて
3.心の栄養
4.ユースホステル
5.北海道旅行
6.海外旅行
7.高原へいらっしゃい
8.リヒャルト・シルマン伝
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ふれあいを求めて
こういう話をすると「私たちと違う世界だ」と思われるかもしれませんが、私も最初からそういう人間だった訳じゃありません。最初は「おいしいものを食べたい」とか「富士山に登りたい」とか、そういう自己満足を満たすことからスタートしています。最初は自分1人が美味しい物を食べることに充分満足していたのです。
でも旅をしている内に、それだけでは満足できなくなったんですね。すごく美味しい食事を頂いても、何だかさみしいんです。旅先で「あれは美味しかったなあ」と思って、東京で同じ物を食べても、美味しくないんです。
なぜだろうと思うと、1人で食べているより、大勢で食べた方がおいしいんですね。それから、自分が美味しいと言うより、自分のつき合っている人たちに美味しいと言ってもらえる方が美味しいんです。自分1人が満足するのでは不満になってくるんです。みんなで喜びを分かち合いたくなるんです。
そうなると、最初は富士山に行きたいとか東大寺に行きたいとか旅の目的だったのが、段々それ以外のモノが欲しくなって来るんですね。足の不自由な方を富士山に連れて行きたいとか、還暦祝いの人を富士山に連れて行くとか、全盲の人を山に連れて行ったり、そういう旅がたまらなく楽しくなってきます。
これは別に、立派な心がけを持っているという訳ではなく、そっちの方が楽しいのです。皆さんも旅されると分かると思いますが、普通の旅なんて、そのうち飽きてきます。他人に喜んでもらうほうが楽しくなってきます。北海道にいる旅人たちというのは、そういうことが好きで好きでたまらない人たちが多いのですね。
映画『男はつらいよ−フーテンの寅さん』を見ていても、寅さんは旅人なんだなあと思います。寅さんは露天商なんだから、もっと商売熱心になってもいいと思いますよね。それなのに、まるでお金に感心がなく、おせっかいをやいて失敗したり、失恋してばかりいる。寅さんは、旅を続けているうちに、もっと違う物が欲しくなったんじゃないかなと僕らは思います。
という感じで、旅の最初は、どこかに行くとか何を見るとかに限定されていますが、それが続くと「ふれあい」を求めたくなる。その延長上に、みんなで協力して作り上げたのが、北軽井沢ブルーベリーYGHという宿ですから、この宿では、「ふれあい」がとても大切なものとなっています。だから、なぜ宿をはじめたか?という理由の最大なものは、旅が好きだからで、たくさんの旅人と、ふれあいたいからです。 |