寅さんに思うこと1

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寅さんに思うこと1

映画『フーテンの寅さん』の主題歌には、

「俺がいたんじゃ御嫁に行けぬ 分かっちゃいるんだ妹よ〜♪」

という一節があります。この歌のなかの「分かっちゃいる」という言葉。これがギネスブックにも載った国民的映画『フーテンの寅さん』のテーマであり、寅さんを語るときのキーワードです。

 寅さんは、厄介者です。
 寅さんは、迷惑かけてばかりいます。
 寅さんは、心配かけてばかりいます。
 でも、そんなこと寅さんは、
「わかっちゃいる」
んですよ。

 俺がいたんじゃ御嫁に行けぬ。そんなことは、分かっちゃいるんですよ。どうせオイラはヤクザな兄貴。そんなことは、分かっちゃいるんですよ。
 迷惑かける。
そんなこと分かっちゃいるけれど、つい、ふらふらふら〜っと葛飾柴又のオイちゃんに
オバちゃん、ヒロシにサクラたちに会いにいってしまう。そしてトラブルを起こして皆を怒らせてしまう。

 寅さんは分かっちゃいる。自分が帰ると皆に迷惑をかけることを分かっちゃいる。だからこそ、寅さんの家族たちは、寅さんが帰省するとピリピリしました。みんな一生懸命に「俺たちゃ誰も、おめえ(寅)さんのことを迷惑だと思っちゃないよ」という芝居をしたんですね。でないと寅さんが帰りにくいと思ったんです。
 実際、寅さんは帰りにくかった。自分が迷惑な存在なことを「分かっちゃいる」から帰りにくかった。でも、おいちゃん・おばちゃん・ヒロシにサクラは、

「迷惑じゃないよ」

ってな芝居をするから、つい、ふらふらふら〜っと帰ってしまう。そんな、みえみえの芝居、芝居であることは「分かっちゃいる」くせに帰ってしまう。そして、家族たちの下手くそな芝居に、ついつい甘えてしまい、また迷惑をかける。そして大喧嘩となる。
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