■映画&テレビを語る
寅さんに思うこと1
寅さんに思うこと2
寅さんに思うこと3
寅さんに思うこと4
寅さん映画を解説する1
寅さん映画を解説する2
寅さん映画を解説する3
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寅さんに思うこと3 人を評価する言葉に「いい奴なんだけれどね」という言葉がありますが、この言葉は寅さんにこそ相応しいかもしれません。
「いい奴と人から言われたらおしまいだ」
という格言がありますが、「いい奴」という言葉の裏には、(善人すぎて)能力が無い人間というニュアンスがあります。
つまり勝てない人間。
勝とうとしない人間。
エリートにも悪党にもなれない無能な小市民のことを
「いい奴なんだけれどね」
と人はいうわけです。
だから私たちは、人から「いい奴」と言われることを嫌います。
いい奴=ダメ人間
を意味しているからです。しかし、そんな私たちが映画『フーテンの寅さん』を見ると何故か心がホッとします。世の中全体が《いい奴=ダメ人間》という時代の中で映画の寅さんだけは、
これでもか!
これでもか!
と「いい奴」を演じきるからです。
ここで映画の文法について解説します。
例外もありますが、映画のストーリーには一定のパターンがあります。ダメな男が何かのキッカケ(事件)で立ち上がり努力して勝利をつかむ。主人公が勝利する物語は、だいたいこのパターンの映画です。
しかし、寅さんという主人公は敗北者ですから、このパターンとはちょっと違います。寅さんの場合は、ダメな男が何かのキッカケ(事件)で立ち上がり努力はするが、結局は失敗して逃げていくという物語です。
そう考えてみると、『男はつらいよ』という映画は、ずいぶん残酷な映画ですね。これじゃ主人公にがかわいそうです。しかし、観客の皆さんは主人公がかわいそうだと思っているでしょうか?
答は、ノーです。
むしろ寅さんを、うらやましく思っています。寅さんのまわりには、心の優しいオイちゃんにオバちゃん、ヒロシにサクラたちがいるからです。『男はつらいよ』に登場するマドンナたちも、寅さんをうらやましく思います。敗北ばかりしている寅さんをうらやましく思っています。
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