■サービスについて
01.二つの経営スタイル
02.二つのサービス
03.第三のサービス展開
04.おまかせ
05.サービスの語源
06.サービスとホスピタリティー
07.ホスピタリティー
08.ホスピタリティーの本質
09.ユースホステルの本質
10.消耗戦
11.御客様をどう考えるか?
12.夢のサービス
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おまかせ「旦那、何に握りましょうか?」
「とりあえず、てきとうに握ってくれる?」
寿司屋で良く聞かれる会話ですが、この、ごくありふれた会話の中に、接客の本質があるのではないかと思います。
まず寿司屋の亭主は、「旦那、何に握ります?」と、お客さまの希望を伺いました。寿司屋は決して自分の方針を強要していません。それに対してお客さまは、「てきとうに握ってくれる?」と答えました。寿司屋の亭主に、メニューをまかせたのです。
おまかせ。
寿司屋にも、焼き鳥屋にも、居酒屋にも、高級割烹にも、おまかせコースというものが必ずあります。どうして「おまかせ」にするのでしょうか? 自分でメニューを選んだ方が、自分の好みを選べていいし、食いたくもないものがでることもないし、受けたくもないサービスを受けることもないのにです。
にもかかわらず、おまかせコースを選ぶ理由は、そこに何かがあるからであり、何かの期待を求めるからです。
『1+1=2』
といった、あたりまえの日常から外れた何かを期待して、おまかせコースをたのんでいるわけです。そして、そのおまかせコースには、マクドナルドといったマニュアルどうりの接客しか返ってこない1+1=2といった日常的あたりまえ的なものは存在してないわけです。
これは旅館のサービスにもいえることで、旅館はホテルスタイルと違って、サービスのチョイスがありません。「いらっしゃいませ」と玄関に入ったとたんに、すでにおまかせコースになってしまっているわけで、旅館ファンのお客さまの大半は、それをとても楽しみにされています。
しかし、ここで重要なことは、旅館のおまかせコースは、なかば強制的であることです。寿司屋のように最初に「旦那、何に握ります?」とは聞いてくれません。基本的にメニューは、おまかせコースの一種類しかないんですね。ですから、そういうところを嫌うお客さまは、旅館でなくてホテルスタイルの宿を選びますね。しかし、おまかせコースのないホテルスタイルも、なんとなく味気ないのも確かです。だから本当のことを言うと宿泊施設も
「旦那、何に握りましょうか?」
「とりあえず、てきとうに握ってくれる?」
とやってほしいわけです。メニューも、おまかせコースも選べる宿泊施設も欲しいわけです。というか、サービスをチョイスしたい人間だって、おまかせコース的な部分が多少でもないと、淋しいんですよね。
「おれは絶対におまかせコースのメニューを選ばない」
と言っても、宿泊施設が1+1=2といったマニュアルどうりの接客しかしなかったら、ちょっと味気ない気分になると思います。そこに行けば、いつも何かがあるという部分がないとおもしろくないんです。だから寿司屋でおまかせコースをたのむのです。
「てきとうに握ってくれる?」
とたのむと、最高のネタがでてくる可能性があるからです。しかも最高のネタは、最後までわからない。今日は、いやにアッサリしたものしか出さないなあと思わせといて、最後にトドンとあぶらののった巨大な大トロがでてきたりします。そいつをほおばると
「うわ〜あぶらがのってる。今までアッサリだったのはこいつを食わせるための前奏だったのか」
と寿司屋の亭主をにらむと、亭主はニヤリと笑っていたりする。こういう感覚は、マックや回転寿司では味わえません。ただ、予算の無いときや、自分の食べたいものがはっきりしている場合は、回転寿司で食べたいときもあるので、おまかせコースをはずしたいこともある。
そのへんが微妙なんです。
それでブルーベリーをオープンする時に、おまかせコースと自分で選択するコースの2つを設定し、お客さまの気分次第で自由に選択できるように設定したわけです。おまかせコースだけでなく、サービスをチョイスできるようにしました。
もちろん接客は、おまかせコースの精神でやっています。しかし、おまかせコースの精神を押し売りすることのないように気をつけています。アットホームを売りにしている宿ですが、プライバシー重視のお客さまも決してアットホームを押しつけない。
むしろ、アットホームが正面にでるからこそ、そういう方を大切にしたい。そう思って、全室に、バス・トイレ・ビデオ・テレビを完備し、部屋の中でもゆっくりできるように気をつけたいと思っています。それが接客の基本ではないかと最近は思っております。 |