北軽井沢日記3
待望の雪!
今シーズン、初雪が異常に早かった割には、クリスマスにもお正月にも、まとまった雪が降りませんでした。例年、クリスマスに雪景色が間に合わなくても、年明けにはどっさりと雪が降るのです。が、今年はなぜか雪が降らない。12月に降り貯めされた浅間山の雪も、日増しに薄くなって、南斜面の地面の露出度などは、3月を思わせるほどでした。
「1月の連休には、お客さんがスキーやスノーシューを楽しみに来るというのに・・・」
と、焦っていても仕方ないので、レース編みで雪の結晶を編んでみました。 ブルーベリーの食堂の中央にある大黒柱に吊します。
そして、今日起き出してみると・・・。
雪が降っているじゃありませんか。
待望の雪です。
長靴をはいて散歩に出ました。
歩く度に、足下からシャラシャラと音がします。
上手にできたシフォンケーキのような踏み心地です。
腕に乗った雪に目をこらすと、たくさんの雪の結晶が混じっています。
空からこんなに繊細なものが、勝手に降ってくるのだから、自然というのは大したものです。
人の目でぎりぎり見えるほどの大きさで、かといって、その形を写し取るほどには長く留まっていないという儚さがまたいいですね。
雪の結晶は、拡大されて、いろいろなデザインに使われているので、大きいようなイメージがあるのですが、実際に見ると、(当たり前なのですが)その小ささに驚きます。
具体的には、直径1.5ミリの六角形が複雑な形をしているのですから。
綺麗な雪の結晶は、上空が、マイナス10度からマイナス15度位でないと、できないのだそうです。
温度が高いと、きれいな花の形にならないし、低すぎると、結晶の数がふえてばらばらになり、細かな雪となってしまうそうです。
数時間後、車に乗ろうとしたとき、車がハリネズミ状態になっていることに気がつきました。
雪が細かい針のような、砂鉄のような、線状の雪になっているのです。上空の温度が低すぎたようです。
雪というと、なんとなく、結晶以外は丸い形をしているものだと思っていましたが、針状の雪もあるのですね。7年住んでいて初めて気がついた気がします。
連休前に、パウダースノーを連れてきてくれた雪雲に感謝です。
北軽井沢を訪れる皆さん、気を付けていらっしゃってくださいね。
散歩のような「ジャージの二人」
北軽井沢を舞台にした映画「ジャージの二人」 2008年の夏に公開されましたが、行こう行こうと思っているうちに、行けずじまいで終わってしまいました。(何しろ、北軽井沢にも、嬬恋にも、軽井沢にも映画館がない!)
先日、DVDがレンタル開始になったので、早速借りてきました。
この「ジャージの二人」、映画化される前に、原作を読んでいたのです。 作者は、長嶋有さんという直木賞作家で、実際に北軽井沢に別荘を持っています。北軽井沢の作家ということで、読んでみたのですが、小説に、出てくる固有名詞が知っているものばかりなので、誰かの日記を読んでいるような親近感がありました。
「8月中は24時間営業だけど、他は11時に閉まってしまうコンビニ」とか 「ダイマル」に買い物に行くとか 「最上階に温泉がある経営が傾きかけているホテル」とか。
映画化の話を聞いたとき、正直、この小説が映画にできるのだろうか? と思ってしまいました。 何か特別な事件が起こるわけでもない日常を書いたものだったからです。
三度目の結婚相手とうまくいっていない父親と、32歳で無職の息子の、スローライフという言葉の美しさとは別の、「ゆったり」でも「のんびり」でもない、まったりした生活。
トースターに、5分以内で使うなら、5分以上回してから戻せと書いてあったので、めんどうになって5分焼くことにした。
とか、読み手と同じ時間が流れている小説です。
映画を見て、このお話は、散歩のような映画だと思いました。
北軽井沢の別荘にやってきた父と息子、そこに訪れる人達も何かしらうまくいかないことを抱えているのですが、その、ちょっと落ち込んだり、ちょっと嬉しいことがあったりする人達を、浅間山がまるごと抱え込んでいるようです。 すぱっと問題を解決するわけでもないし、英雄的な行為をするわけでもないのですが、みんな、等身大の温かさを持って、一緒に生活しています。
ハリウッドのような、あー、面白かった。という映画は、次から次へとストーリーが展開し、山場があって、ハラハラして、こちらに何も考えさせる隙間がありません。映画が作り出す波に乗っているだけで楽しませてくれます。
けれど、この「ジャージの二人」は、一見、退屈とも思えるような間がたくさんあります。 この間で、いろいろと考えたり、味わう時間があるのです。 その感覚が散歩に似ていると思いました。
散歩というのは、基本的に暇なものです。 車と違ってスピードは出ないし、緊張感もありません。 鳥の声を聞いたり、雪の下から顔を出した畑を見ながら体を動かしていると、日常のやるべきことの下にしまわれていた自分の気持ちや、考えなどがふっと浮き上がってくるのです。 そういうもやもやした感情は、おぼろげなので、日常をどけてあげないと出てこられません。
その感覚に、「ジャージの二人」は似ていると思います。 なので、この映画の「間」が多い分、見た人の感想も異なるのではないかと思います。
また、今では閉店されてしまったスーパーや、いつも小鳥が鳴いている森の中。広大なキャベツ畑。 今は冬ですが、夏に撮影されたこの映画を観ると、妙に懐かしさを感じます。 数十年後、万が一、私が北軽井沢に住んでいなくて、この映画を観たら、とても郷愁を感じるのではないかと思いました。北軽井沢の今を撮っていながら、私にとっては、既に懐かしいような、遠い夢のような映像のように思えてくるのです。
けれど、私にはまだまだこれから迎える北軽井沢の夏があるのだな、と思うと、それが嬉しく、待ち遠しく感じられるのでした。
古い別荘が好き
年期の入った建物が好きです。
ブルーベリー周辺は、別荘地なので、様々な古さの、いろんな形の家があります。 家というのは恐ろしいもので、人が住まなくなると、途端に荒れ始めます。 人気のない家というのは、なんとなく分かるものです。 手入れもされず、持ち主がほったらかしのままの家は、だんだんと朽ちてゆき、殺気までおびてくるように感じられます。
けれど、人気はないけれど、昔は、持ち主が愛情をかけて住んでいたのだろうな、と思わせる家もたくさんあって、そんな家は、古くなっても周りの景色に溶け込んでいます。 庭の木や花は、春になれば勝手に花や新芽をつけるので、5月にもなれば、人の気配とはまた違った賑やかさがあるのです。
小川の流れる音と、野鳥の声が大きくなったら、散歩にはベストシーズンです。 まぁ、どの時期でもこのあたりの散歩は気持ちいいのですが、牧草と新芽が青々として、水仙やレンギョウが鮮やかな黄色を添えるこの季節の散歩は格別なものがあります。
ブルーベリーから、国道146号に出る2キロほどの道を歩きました。
このあたりで一番古い別荘地は、一匡村です。 大正時代に大学の教授達が住み始めた別荘地で、今でも別荘地はきちんと手入れされ、連休には、庭に椅子を出してくつろぐ優雅な人達を見かけます。
一匡村の別荘も建て替えが進んでいるようですが、まだ、古い別荘も数件残っています。
古いかどうかは、窓ガラスを見ると分かります。 今のガラスは、何の凹凸もなく、表面が真っ平らですが、古いガラスは、表面が少し波打っています。 それが、映りこむ外の景色をぼやかして、何ともいえない味わいなのです。 この見分け方は、ブルーベリーに泊まりに来た骨董品屋のおじさんに教わったのですが、それ以来、古いガラスを見つけると嬉しくなってしまいます。
この別荘の窓に、木の枝がゆがんで映っているのが分かりますか?
家の前には鳥の巣箱がありました。
さらに進むと、牧草地と浅間山の風景が素晴らしい場所を通り過ぎます。
この場所は、他府県ナンバーの車が必ずカメラを構えている場所です。 もっと牧草が伸びたら、牛の為に牧草を刈り取るのですが、刈り取られた牧草地からは、ふんわりと甘い香りがするのです。
途中、憧れの庭を持つ家があります。
ここは、湧き水がある池があり、睡蓮が浮かんでいて、池の周りには様々な花が咲いて別天地のような庭です。
こんな庭のある家に住んだら、毎日どこにも行かなくても幸せかもしれません。 今盛りのシャクナゲが見事でした。
そこも通り過ぎると、教会のような三角屋根の別荘がありました。
時々、門のある別荘を見かけます。 北軽井沢のような、土地が広くて、あまり区切られていない場所では、門の意味はあまりなさそうです。 が、役に立たないけど、「門」というたたずまいが好きです。この奧には何か特別な物がありそうな気がするのです。 門の他にも、役に立たないけど、「橋」というのもあって、これもまた風情があって好きです。
ひっそりとした庭に、レンギョウが鮮やかな黄色で咲いていました。
冬が長い分、この季節は、めまぐるしく植物が育っていきます。 はじめは短かったタンポポが、今では周りの草と高さを競い合って、長く伸びています。 これは、ブルーベリーの庭にあったタンポポです。写真で分かりますか?
タンポポは、機械の下の日陰から生えていて、太陽を求めて伸びるうちに、とうとうチューリップと同じ高さになってしまったのです。
植物の生命力に驚かされる5月です。 私の身長も、少し伸びているかも。
逆境にもめげず・・・
山の麓にゆりの花、ここは、鹿沢ゆり園です。 7月中旬から9月にかけて、約150種50万株のゆりの花が咲き乱れます。 去年の夏、ここを訪れて、あざやかなゆりの色とゴージャスさに圧倒されました。 (2008年7月29日の様子)
冬は鹿沢スキー場として、夏はゆり園として、楽しめます。 リフトもあるので、歩きが苦手な方でもお気軽に花と山の楽園へいってらっしゃ〜い。
★鹿沢ゆり園
帰りがけにゆりの苗を買って帰りました。 様々な色と品種があって迷いに迷いましたが、一株を購入。去年はきれいな花を咲かせてくれました。
そして、今年、また球根から芽が出て、周りを圧倒する勢いで、ぐんぐん伸びました。 一株だった苗が、今年は二株に増えています。
昨日、ゆりが咲きました! あれ、よく見ると、部屋の中ですね。
実は、1週間前嵐のような雨と風が吹きました。 明くる日、外に出てみると重たそうなつぼみをたくさんつけていた苗の1本がポキンと折れていたのです。
添え木をしてやらなかったことが今更ながら悔やまれました。 この晩の風は、トウモロコシの太い茎さえ折るほどの大風だったのです。
せめて、折れた苗は花瓶に挿して、もう一本には添え木をしてやらねば、 と添え木を探して戻ってみると・・・
それまで立っていたもう一本の苗まで、根本から折れていました。
ふと、私のおじいちゃんとおばあちゃんの事を思い出しました。
うちのおばあちゃんは、100歳まで後数ヶ月というところで、ほとんど老衰のように亡くなりました。 その時、おじいちゃんは施設に入っていて、おばあちゃんが亡くなった事を知らせるのはあまりにも辛いだろうということで、お葬式もおじいちゃんには一切知らせずに行ったのです。
何も知らないはずのおじいちゃんが亡くなったのはそれから2.3か月後の事でした。
70年以上も一緒に生きてきた二人でしたから、亡くなった事は知らされていなくても、なんとなく、自分のそばにいた暖かいものがふと消えたことを、おじいちゃんは、心のどこかで感じていたのではないかと思うのです。
倒れてしまった2本のゆりを見て、植物にももしかしたらそういうことがあるのかもしれないなと、思いました。
けれど、このまま何もしないのは、どうにも無念です。 特に食堂のすぐ前に植えて、毎日成長を見てきたゆりだったので、何とか花が咲かないものかと、折れた苗は花瓶にいれました。 もう一本の折れた苗は、折れてはいるものの、なんとか中心はくっついています。 それに添え木をたてました。
花瓶は食堂に置きました。 2本のゆりは日増しにぐったりしてきます。 あー、やっぱり花は咲かないかなぁ、と思っていたところ、花瓶にさした方のゆりのつぼみがうっすら赤くなってきました。
ある朝、起き出してみると、ゆりが花を開いています。 小学生の頃、飼っていた青虫が虫かごの中で大きな蝶になっていた時のような不思議な感じがしました。
よくがんばった。 添え木のゆりとはガラス窓を隔てたサンルームに花瓶のゆりを起きました。 すると、日に日に、3つの花が咲いたのです。
ガラス越しの添え木のゆりは、こころなしか、つぼみが赤くなってきたようです。
めげなかったユリのその後
前前回(7月13日)のブログで書いた、大風で折れたゆりが、花を咲かせた件ですが、 根もとから折れたものの、添え木をつけてがんばっていた方のゆりも、その後、無事、花を咲かせました! パチパチパチ。
それを見たダンナさん。 花瓶のゆりを取り上げて一言。
「このままじゃ、球根が出来ないな・・・よし。俺が修理する」
修理って何を!? と、慌ててダンナさんを追いかけると、折れたゆりを、元どおりにくっつけると言います。
こんな風に、ぱっきり折れているのですよ。 くっつけるって、どうやって・・・。
ガ、ガムテープですか・・・。
さらに荷物紐で固定。
修理完了。 無事、仲良く2本のゆりが元どおりになりました。 ほんと?
半信半疑でしたが、24時間経っても、ちゃんとゆりは枯れずに花を咲かせていました。 ちゃんと、虫たちもゆりに集まってきています。
「これで受粉すれば、来年も花が咲くね」
と、私とダンナさんは話し合ったのでした。
・・・が、 後からインターネットで調べてみた所、ゆりは受粉しなくても球根はできるそうなのです。 ゆりが受粉して種ができると、球根が痩せてしまうので、ゆりを栽培する人達は、わざわざ開いたばかりのゆりの花を切ってしまうとのこと。 これは、チューリップでも同じで、球根を大きくするために花は切り落としてしまうのだとか。
がーん。 けれども、一生懸命ガムテープを巻いていたダンナさんに、この事実を言えないのでした。 来年またゆりが花をつけてくれたら、
「やっぱりあのときにゆりを修理したおかげだね!」
と、なるべくわざとらしくないように、言おうと思っています。
アリ目線の浅間牧場
ブルーベリーから車で10分のお手軽ハイキングコース、浅間牧場。 今日はちょっとアリ目線になって、ひっそりと咲いている花を見つけに行きました。
ひざ下10センチ以下に目を向けると、車からは見えなかった花がたくさん。 これは、名前も風流なホタルブクロです。 大正時代のランプのような形。
朝顔のような葉をしたツルで伸びる植物。 ずっと気になっているのですが、誰かこの花の名前を教えて!
よく見ると可憐な、ウマノアシガタ。 馬ってこんな足だったかなぁ。
南天のような赤い実が目立っていました。
しとやかなオダマキ。 一度、庭に生えていたオダマキを花瓶に挿したら、すぐに散ってしまいました。 この繊細な姿は家の中では見られないのですね。
いつ見ても、つぼみに見えるナワシロイチゴ。 よくよく見ると、花が開いています。 8月にはラズベリーのような実をつけるのです。 私も好きですが、クマもお好きだそうで。
とても地味ですが、じーっと見ると、ピンクのグラデーションがいいじゃないですか。
あじさいに似たノリウツギ。 アイヌの人達はこの枝の中のノリ状のものをシャンプーに使ったそうです。
クガイソウ。 色といい、形といい、なんだか粋な花です。
私の好きなシモツケの花。 ブルーベリーの庭にも2年目の木があります。今年はたくさん咲いて嬉しかった。
蝶もやってきました。
アヤメの群生地帯もあります。
牧場へ続く道。
ズミの木。5月には白い花を咲かせ、秋には赤い実がなります。 果実酒にすると、りんごのような香りがします。
北海道の美瑛には親子の木という3本の木がありますが、これは、浅間牧場の親子松(と、勝手に呼んでます)
びんぼう草なんて誰がつけたのでしょうか? カモミールなんて名前だったら、もっと優遇されてると思うのですが。
木とベンチ・・・と、緊急避難所があるのが浅間山のふもとらしい風景。 けど、この避難所、出口が浅間山に向いてます。
今年も開催・北軽井沢クラフトフェア
10月3日(土)と4日(日)の2日間、北軽井沢のハイランドパークで、北軽井沢の杜・クラフトフェアが開かれています。 北軽井沢周辺や、近郊にお住まいのクラフト作家さんの作品が一堂に集まる、手作り好きにはたまらないお祭りなのです。
第一回目の昨年、フェアの様子をブログに書いたところ、実行委員会の方が、ブルーベリーまで案内のポストカードをたくさん送ってくださいました。 実行委員の方、ありがとうございました!
昨年入手したちいさな雑貨たち、時間がたつごとに味わいを増していました。
今年もずっと楽しみにしていて、お客さんのチェックイン前にこっそり行ってきました。
この日は朝から激しい雨音で目をさましてしまう程の雨模様。 10時の開始と共に小雨になったものの、ずらっと並んだ青テントの中には、もうすっかり魅力的な作品が並んでいます。
はやる気持ちをおさえつつ、ひとつひとつのテントへ。
雨の日の早い時間は、お客さんも少ないので、作家さん達も気軽に声をかけてくれて、お話しできるのがいいところ。 普段、素敵な作品を見ることはあっても、なかなか作家さんとお会いできる機会はないので、こういう機会は貴重です。
やはり、手作りのものというのは、作っている人そのものだなぁ、と思います。 作品と作家さんは、流れている雰囲気が同じ色なんですよね。
栃木県の益子から来ている陶芸作家さんも何人かいらっしゃいましたが、皆さんお若い。そして、益子焼きという伝統にこだわらずに、土も形も自由なオリジナルな焼き物を作っていらっしゃいました。
昨年、うちにやってきた鳥の置物を作っている山梨の作家さん、この方のお店には絶対行くぞ、と思っていると、人だかりのしているテントが。
今年も、出展されていました!
昨年の作品とはまた少しずつ違った形でしたが、精密で、ほのぼのとした雰囲気はそのままです。今年も鳥を一羽購入。
「去年も購入して、気に入っちゃったんです」 と、言うと、作家のお兄さんは、
「嬉しいなぁ。あの子は元気にしてます?」
「はい。おかげさまで。みんなの人気者です」
そうそう、この方は作品にこういう風に接する人だったなぁ、と思い出して、また嬉しくなったのでした。
帰り際、やっと太陽が顔をだしました。 気持がほっと温かかったのは、天気のせいだけではないようです。
10月3日の日曜日は、お天気も良いようです。 会場では、気軽に参加できる体験コーナーもありますので、 北軽井沢でアートに触れてみてはいかがでしょうか?
★ 北軽井沢の杜クラフトフェア
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