軽井沢日記
話題の花畑牧場でホットキャラメルアイスを食べてきました。前編
軽井沢アウトレットに、生キャラメルで有名な、花畑牧場がレストランを出店すると聞いて、ぜひ行かなければ、いや、行きたい!
と思いつつ夏を過ごしていましたが、今日、ついに行くことが出来ました!
何しろ、北海道と東京以外の出店は、軽井沢が初めてということで、今年の夏、開店当時はすごい行列だったらしいのです。 けれど、もう夏休みも終わったし、平日だし、そろそろすいているかも・・・と思ってアウトレットに入ったら、駐車場も満車ではないけれど、けっこうな人出。 ちょうどお昼時ということもあって、花畑牧場には、次々と人が吸い込まれていきます。
湖にせり出した広いレストランの中は、「ホエー豚丼」が食べられるレストランコーナーと、ソフトクリームや、ホットキャラメルアイス、お持ち帰り用の生キャラメルやチーズなどが並んでいるコーナーに分かれています。
お昼時なので、「ホエー豚丼」の列に並びます。 その間、アイスクリームを販売しているお兄さんお姉さんのピンクの制服をチェックしたり、ホットキャラメルアイスの一口目を食べるお客さんの表情を観察しながら順番を待ちます。
「あ、あのお姉さん、幸せそうに頷いてるよ。きっと美味しいんだろうなぁ」
そんなことを考えていると、それほど待たされることなく、席につけました。
豚丼定食を注文し、出てくるまで、他のコーナーを物色します。
「せっかく花畑牧場に来たんだから、名物のキャラメルアイス食べたいなー。でも豚丼もあるから入らないかも・・・」
後ろ髪引かれる思いで席に帰った私と交代で、今度はダンナさんが、物色に行きました。
人の気配にふと振りかえると、そこにはダンナさんが、何の迷いもなく、片手には、キャラメルソフト、もう片方の手にはホットキャラメルアイスを持ってやってくるではないですか。
この人の胃袋には迷いがなかったんだ。
こういう時に、たくさん食べてくれる人が一緒にいるとありがたいです。 早速、キャラメルソフトをいただきます。
キャラメルの香りがふわっと広がります。 一口食べると、ジャージ牛のミルク味から、1歩ほど遅れて、キャラメルフレーバーがやってきます。
うーん、何か懐かしい味・・・これは・・・。
そうだ。チェルシーの味。
チェルシーって知ってます? キャラメル味の飴で、ヨーグルトとか、バター、コーヒーとかいろんなフレーバーがあります。イギリスっぽいパッケージで、子供の頃、旅行や遠足には必ず持っていったものでした。
花畑牧場のキャラメルソフトは、甘すぎず、ふんわりと優しいチェルシーの味のようでした。
懐かしさとおいしさで、いつの間にか、先ほど見たお姉さんのように、頷いていた私でした。
題の花畑牧場でホットキャラメルアイスを食べてきました。後編
軽井沢駅から、徒歩5分で北海道の味が堪能できる花畑牧場カフェ。 前回に引き続き、花畑牧場の話題を。
あれ、前回は 「ホットキャラメルアイスを食べてきました」 という題名の割にはキャラメルアイスが出てきてない。
なんだかテレビのバラエティ番組のような引っぱり方になってしまいましたが、ついでに、さらに引っぱりましょう。
花畑牧場を有名にした生キャラメルもここでは数量限定解除で売っております。 ヤクザ屋さんも、まとめ買いOKです! 夕張メロンとか、ハスカップとか、北海道をイメージさせるフレーバーのものもたくさんありますね。
おみやげコーナーから帰ってきたダンナさんがこそっと言ってました。
「すごいよ。みんな、カゴにどんどんキャラメル入れてる。『東京じゃ買えないものね〜』って言ってた」
実際に東京じゃ売り切れになっているかは分かりませんが、そう思わせる何かがありますね。
それにしてもこの花畑牧場。 私のようなスイーツ好きの女性を取り込むのは簡単だとしても、一緒に来ているお父さんや彼氏のハートも、 「ホエー豚丼」 で、しっかりわしづかみにしているところがさすが! と思いましたね。
花畑牧場の生キャラメル!
というブランドに引き寄せられて、ホットキャラメルアイスを食べ、思いもしなかった豚丼も食べているわけですから。 有名になっただけの工夫があるなぁ、と思いました。
そして、個人的に気になったのが、このカチョカヴァロというチーズ。 ひょうたんのような形が面白いですね。馬の鞍から垂れ下がっているような形だったことから「馬の鞍」という意味なのだそうです。
フライパンで焼いてたべると、モッツァレラのようでおいしいそうな。 次回試してみたいです。
さて、やっとホットキャラメルアイスです。 バニラアイスに、温かい生キャラメルがたっぷりかかっています。
お味は、濃厚です!
さすが生キャラメルの花畑、生キャラメルを心ゆくまで堪能できる満足感があります。 ホットキャラメルアイスの後に、前述のキャラメルソフトを食べると、キャラメルの濃厚さで、ソフトの味がわからなくなるくらいの充実ぶりです。
私はキャラメルソフトの方が好きですが、遠くから、花畑牧場にやってきた観光客の方には、花畑牧場の個性満開の、ホットキャラメルアイスの方が、印象に残るだろうな、と思います。
食欲の秋モードに入った胃袋にもぴったりな、ホットキャラメルアイス、おすすめです。
ギモーヴ進出
先日、丸山珈琲で、初めてギモーヴという生マシュマロを食べました。 ネットで見てみると、このお菓子はマカロンに続く
「なんだかオシャレなおフランスのスイーツ」
としての位置を確保しているようでした。
ブームなんだなぁ、と実感したのは、ここ2週間で、3回も、ギモーヴを食べる機会があったからなのです。 1回目は、丸山珈琲小諸店。 フランボワーズのギモーヴは、かなりマシュマロに近い味でした。
2回目は、万平ホテルランチのデザート。 創業100年以上という万平ホテルのレストランは、普段はなかなか近寄りがたいのですが、2007年からやっているランチフェアに行ったのです。 今年は2009年なので、2009円で、洋食か中華のコース料理をいただけます。 期間限定で、今年は1月5日(月)〜3月13日(金) ※冬季休館期間(1/13〜2/18)を除く日程でした。
数々の著名人をもてなしてきた万平ホテルがどんな料理を出すのかという実体験ができて、とても勉強になります。 洋食コースのデザートに、ちんまりと乗った四角形。おおっ、ここにもギモーヴ・・・。
上品な中年紳士のウェイターに運ばれたギムーヴを、ナイフとフォークでいただきます。 万平ホテルのギモーヴは、(おそらくフランボワーズ)フルーツの風味が濃厚で、1口サイズでもしっかり満足でした。しっとりしていて、まさに「生」マシュマロといった感じです。
3回目に出会ったギモーヴは、意外にも家の近くでした。 三原にあるセブンイレブンの棚に、ギモーヴがあったのです。 バニラ風味でした。
セブンイレブンって、新しいものを取り入れるのが早いと思いませんか? ちょっと珍しい食品が海外からやってきて、雑誌やテレビが取り上げはじめ、はじめは都心の高級レストランあたりでしか食べられなかったものが、いつの間にか、セブンイレブンが商品化して、全国に広められる。
以前、イベリコ豚が有名になり始めた頃、確かセブンイレブンだったと思いますが、
「イベリコ豚のおむすび」
が発売されて、早速買いました。 セブンイレブンで流通するほどイベリコ豚ってたくさんいるのかなぁ、と疑問に思いましたが、マイナーなものを、本質とは違うかもしれないけれど、実際に手にとって食べられるものとして広める力に感心しました。
以前、
「セブンイレブン覇者の奥義」
という本を読みました。 週に一度、全国から、セブンイレブンの社員達が東京に集まるのだそうです。 全国から飛行機を使ってやってくる社員の数は1500人。 彼らは自分の担当地区のセブンイレブンに、経営の指導をする人達です。 丸一日、会議や店舗での改善報告、会長の講話などがあります。
残りの6日間で、社員達は、すべての店舗に、最新の情報を均一に、正確に伝えるのだそうです。 この毎週の会議にかかる出張費用は、年間30億!
けれど、それだけのコストをかけてもあまりある利益をもたらしているからこそ創業以来、この会議は続けられているそうです。
そういう手間があるから、どんな地方のセブンイレブンでも、ほぼ同じ環境が保たれているのだなと思いました。そして、新しいものに対する反応も早いのです。
話はそれましたが、これがおフランスのパティスリーから、日本のチベットと言われる嬬恋のセブンイレブンまではるばるやってきたギモーヴです。
コロンとしていてかわいい丸形。フタを開けた途端に、バニラの甘い香りがしてきます。 味は、やはりマシュマロっぽいですね。しっかり甘い感じです。
ギモーヴがマシュマロと違うのは、マシュマロはゼラチンと卵白でできていますが、ギモーヴは卵を使わず、フルーツのピューレなどを入れて作るそうです。
ギモーヴも、マカロンも、日本では、特別な日の贈り物のような扱いですが、フランスでは一般的な、どのお菓子屋さんにも置いてあるようなものらしいです。 日本のおまんじゅうのようなものかな。
材料も、結構シンプルなので、機会があったら作ってみたいお菓子です。
初のデザインカプチーノ体験
軽井沢で、いや、日本では知る人ぞ知る丸山珈琲。 北軽井沢周辺で一番おいしいコーヒーが飲めるカフェだと思います。
ワインで言うソムリエは、ワインの味見をしてそのグレードを見極める人のことですが、コーヒー界にも、ソムリエにあたる「カッパー」という人々が存在しています。ご主人の丸山さんは、日本では数少ないカッパーの一人。 自ら海外に豆を買い付けに行き、自家焙煎のコーヒーを、飲ませてくれます。
今までは、軽井沢の本店に何度か足を運んでいましたが、昨年末、小諸に新しい丸山珈琲がオープンしたということで、行ってみました。
。
駐車場に入ると、すれ違った車に、何と丸山さん本人が乗っていらっしゃいました。 雑誌などで、コーヒーが取り上げられると、必ずと言っていいほど丸山さんがインタビューを受けているので、分かったのです。
小諸店は、親戚の別荘に来たような雰囲気の軽井沢店とは違って、全面ガラス貼りの大きなお店です。 都会的な雰囲気ですが、都会では、こんな贅沢な空間はとれないだろうなぁ、と思います。
店内は開放的な、とても洗練された雰囲気で、コーヒーの道具が美しく並んでいます。 カフェスペースには、座り心地の良さそうなソファや、膝掛け、独特の形をした丸テーブル。 本棚に並んだコーヒーの本もセンスが感じられます。
コーヒーだけではなく、ケーキやパンのメニューもありました。 長野県内のおいしいケーキ屋さん、パン屋さんから取り寄せているお菓子達は、どれもおいしそうで目移りしてしまいます。 ダンナさんは、丸山珈琲ブレンド、私はカプチーノとギモーヴュというお菓子のセットにしました。
この、「ギモーヴュ」というのは初めて聞く単語です。どう発音していいのやらわからず、
「ぎ・ぎもーぶゅ・・・」
とたどたどしく注文すると、店員のお姉さんは優しく
「カシスとフランボワーズどちらになさいますか?」
と、笑顔で言いました。
「えっと・・・」
カシスとフランボワーズの違いが分からずに、頭の中を真っ白にさせていると、お姉さんは、二つの違いを、頭が真っ白な人間でも分かるように説明してくれるのでした。
ありがとうお姉さん! 美しい人は気持も美しいのですね。
ダンナさんの注文した丸山珈琲ブレンドです。2杯分あって、525円はお得です。
そして、カプチーノが運ばれてきて私は思わず呟いてしまいました。
「かわいい・・・」
コーヒーの上には泡で葉っぱ模様が描かれていたのです。 こういうコーヒーを、デザインカプチーノとか、ラテアートと言うのだそうです。 本や、ネット上で、芸術的なデザインカプチーノを見たことはありましたが、目の前に出されたのは初めてでした。
これを作るには、相当の熟練が必要だそうです。 泡で出来ているから、すぐに形がなくなってしまうのかと思いきや、しっかり、きめ細かい泡が葉っぱを形作っていて、少しも崩れないのです。さすがプロ、と感心しました。
さて、こちらも初の「ギモーヴュ」です。 ピンク色の四角を食べてみると、ふわふわ柔らかなマシュマロのような味と食感です。 こんなお菓子があったのですね。
3月14日までは(日時がちょっとあやふやですが)、このカプチーノとお菓子で、ホワイトデーセットとしてお値段もちょっとお得になっています。
ホワイトデーのお返しに、こういうところでおいしいコーヒーをご馳走になるっていうのも素敵、と思っていると、向かいに座って本を読んでいたダンナさんが、
「世界一死刑が多い国は中国なんだって」
と、ホワイトデーにはまずしないだろうと思われる話題を振ってくるのでした。
私達の後には、一人で入ってきた男性が、コーヒーを飲みながら、ゆっくり本を読んでいます。 カフェというと、なかなか男性1人では入りづらいお店も多いですが、ここは男性一人でも、ゆっくりくつろげる場所だと思います。もちろん、女性でも。 また行ってみたいお店です。今度は、コーヒーに合うというクロワッサンや、クリームパンを食べたいなぁ。
●丸山珈琲小諸店の地図はこちら
★追記★
実は、丸山珈琲に行く前に、以前から気になってはいたのですが、初めて行く場所に立ち寄ってみたのでした。 それは、インターネットカフェ。 何を今さら、と思われるでしょうが、あまりにも異質な空間に感動して、つい写真を撮ってしまいました。 丸山珈琲とは対極を行くカフェですが、ここも結構、おもしろかったですよ。
ドイツ料理・キッツビュール
以前、ブルーベリーにやってきたドイツ人のお客さんに教えてもらった、旧軽井沢のドイツ料理レストラン「キッツビュール」に行ってきました。
旧軽井沢にありながら、こちらが教えてもらうなんて、ちょっと恥ずかしいのですが、この店はノーマークだったのでした。 ドイツ人もご推薦のお店なのだから、本場の味に近いに違いない。と、過去3回ドイツに行ったダンナさんと一緒に出かけました。 店内は、ドイツらしい大きなリースが飾られていて、こじんまりとした落ち着いた雰囲気。
メニューを見てもさっぱり分からないので、ドイツ歴のあるダンナさんにお任せしました。 私は、ライトミールというコースを注文。 ダンナさんは、ドイツビールと、白ソーセージ、ドイツ名物ザワークラフト。 どんなものが出てくるのかわくわくです。
前菜からして、珍しいものが出て来ました。 ケーキのような形をしたキッシュ。上にスパイスらしきものがかかっています。 レタスの上には、ゴボウサラダのようなものが乗っています。
「ドイツでゴボウなんて、食べたっけ?」 「うーん、ゴボウを食べる民族って日本人ぐらいじゃなかったかなぁ」
ウェイターさんに聞いてみると、
「根セロリのサラダです」
根セロリというのは、はじめて聞きました。 サクサクした歯ごたえは確かにセロリのようですが、帰ってからネットで調べてみると、見かけはどう見てもジャガイモか里芋。 フランス料理などにも使われるようです。 ここがドイツ料理屋でなかったら、ゴボウサラダと信じ込んでいるところでした。質問してみるものです。
そして、パンもいかにもドイツらしく、プレッツェルというハート型のパンが出て来ました。 もちもちしておいしい! ドイツではビールのおつまみだそうです。
そして、タマネギのスープ。 「甘ーい!」
タマネギの甘さがしっかり出ています。こんなスープは初めて飲みました。 またまたウェイターさんに聞いてみると、このスープには、黒ビールが入っているそうです。 全くアルコールの味はしないのに、変わった隠し味です。
メインは、ロールキャベツ。
下に惹いてあるマッシュポテトがまろやかでおいしい。 ソースも日本人好みで、ご飯でもいけそうです。
ドイツ名物ザワークラフトは、キャベツの千切りを酢漬けにしたもの。 ダンナさんに言わせると、これでも酢が少なめで日本人向けにしてあるとのこと。ドイツに行くと、毎回、このザワークラフトが出てくるそうで、日本人にとっての漬け物ですね。
そして、ミュンヘンの名物という白ソーセージ。
真っ白なソーセージが、ぷかーっとお湯の中に浮かんでいます。 ナイフで皮をとって、マスタードで食べます。 ついてきたマスタードはなぜか甘いのですが、これがドイツでは普通なのだそうです。 あっさりとした味で、近い味をあげるならば、高級なはんぺんでしょうか。 はんぺんと言っても、おいしいので、誤解なきよう。
そして、デザートは、イチゴのムースでした。
ここにたっぷり添えられている生クリームを食べてみると、全く甘くないのです。 これもドイツ流だそうで、ドイツの生クリームは、砂糖をいれないそうです。 甘いケーキを食べるとき甘さを和らげるためにクリームをつけるのだとか。 確かに、甘くない生クリームは、意外とさっぱりしていました。でも、カロリーは高そう・・・。
そして、濃いめに入れられたコーヒーで締めくくりです。
ダンナさんの飲んでいたドイツビールも、飲みやすくておいしかったそうですが、私は運転手の為、味見できず。
帰り際、料理長らしき人に 「ドイツ料理のお店なんて、めずらしいですね」 と、聞くと、長野ではうちぐらいじゃないかと思います。とのこと。
どの料理もおいしかったです。 と言っても、私はドイツ料理が初めてだったので、本場のドイツ料理にどれだけ近いのかが分かりませんでしたが、ダンナさんによると、本場のドイツ料理と比較しても、かなりおいしかったそうです。
変わった料理を食べたい人におすすめのお店です。 ちょっとした旅気分も味わえますよ。
★レストラン・カフェ キッツビュール ホームページ http://www.tsuiteru.com/gr/kitzbuehl/
ぐっとくる紙と箱
昨日のクリスマスイブ、私は旧軽井沢の恵シャレーに行ってきました。 ここは、クリスマスイルミネーションが素晴らしいのです。 結婚式場併設のなんちゃって教会ではなく、ちゃんとした教会が運営しているので、博愛精神が至るところに満ちあふれています。
外で配られているシナモン入りのあたたかい紅茶もしみじみおいしいですが、教会内にあるカフェ、ウッドシェッドがとても素敵でした。
メニューは、ケーキもドリンクもすべて250円という博愛価格。 店内はロウソクの光で照らされ、窓から見えるイルミネーションと相まって、とても幻想的なのです。
どうして今までここに入らなかったんだろう、と、ダンナさんと何度も言い合いました。 灯台の下の暗がりにこんなに素敵なカフェがあったとは。
おいしいケーキとハーブティをいただきながら、 「数メートル先のホテルで買った薄ーいチョコレート、このケーキと同じ値段だったっけ・・・」 と、涙目で思い出すのでした。
古き良きアメリカを思わせる店内のデコレーションもさることながら、私が一番感動したのは、ケーキの下に敷いてあるペーパーナプキンでした。
青い夜空にサンタクロースが飛んでいる柄と、子供3人が雪合戦に興じる柄。 子供たちの妙に見開かれた眼が、なんだかアメリカーン。
ペーパーナプキンは、素敵な柄が多くて好きなものの一つです。大胆な柄が多いので、さすがに、こんな柄のお皿は買う勇気がないけれども、ペーパーナプキンだったら、気軽に使えます。 使い捨てのペーパーナプキンなのに、デザインも、色も素敵なものが多いというところに、西洋文化の豊かさを感じさせますね。 ケーキの下に敷いたり、クッキーなどを包んだり、柄によって、お菓子の雰囲気がガラッと変わるのもおもしろいのです。
ペーパーナプキンだけでなく、お菓子の箱や、包装紙にもぐっときますね。 最近は、素敵な箱や袋が多いので、空き箱がだんだんたまっていくという、ばあちゃん体質に拍車がかけられています。
先日、Eさんにいただいた、「銀座マカロン」の箱にも感動しました。
白い箱に赤いゴムがかかっているだけのシンプルなつくりなのですが、ゴムを外しただけで、箱が一枚の平らな紙になってしまうのです。テープもホチキスも、使っていないので、箸より重い物を持ったことのないお嬢様でも、人差し指一つでゴミの分別完了です。 釘を一本も使わず建てられた法隆寺に通じる、匠の心を感じる箱でした。 箱のオープンセレモニーで感動、マカロンの美味しさにも感動2倍の、高級お菓子でした。 Eさん、ありがとうございます!
マリアージュ・フレールの紅茶も、缶から紙の箱に変わったし、お菓子の包装紙の裏に、切り取ってのり付けすれば封筒になります。という切り取り線までついているものもあり、衣装ケースもプラスチックから段ボール製に代わり、紙の活躍する場が増えているようですね。
けれど、紙になったからと言って、安っぽくなってしまったのではつまらない。 地球に優しく、かつ、高級感やら、デザイン性を失わないラッピングが、今後もたくさん現れそうで、楽しみなのです。
軽井沢の道標
今日は、軽井沢に住む外国人達のいこいの場だったという、「オルガンロック」にプチハイキングに行ってきました。 旧軽井沢の賑やかな通りから、聖パウロ教会に続く小道に入って行くと、苔むした庭を持つ別荘や、オーブンテラスのしゃれたレストランが、ほどよい間隔で並んでいます。
軽井沢は湿気が多いせいか、見事な苔庭がたくさんあります。いい苔庭を持っているということは、軽井沢別荘族の一つのステイタスなのだそうです。苔庭がついている別荘は、それだけで100万円高くなるそうですし、軽井沢住民は、泥棒に入られることよりも、泥棒によって苔庭が踏み荒らされる事の方を恐れるのだそうです。 確かに、緑色の苔が絨毯のように広がる庭は、とても品があります。
苔庭というと、日本的な感じがするものですが、そこに建っている別荘はどことなく洋風です。かといって、現代的なのではなく、明治、大正の頃に、日本人が憧れた洋風といった感じの建物。古きよき時代の日本と西洋が入り交じった雰囲気なのです。 また、カラマツやクリ、モミノキなどが多いのも、洋風な雰囲気に拍車をかけてすまね。杉、松、石灯籠なんかがあったらそれこそ日本庭園になってしまいますが、軽井沢の場合、小道の奥から、馬に乗った宣教師が出て来るんじゃないだろうか、というような空気があるのです。
そんな気分に浸っていると、隣を歩いているSさんが言いました。 「ここが俺の別荘だったら、庭に除草剤撒くな」 「そういう人は軽井沢に住んじゃいけないね」 と、私は言いました。
すると、別荘の片隅に、石でできた四角いもの、墓石の小さいようなものがころがっています。 よく見ると、「WENDY」と書いてあります。 ここに住んでいた外国人の名前でしょうか? 墓石にしては小さいけれど、名前の下にある「1351934」という数字が気になります。墓石にまで外国人の名前があるなんて、さすがは軽井沢、と思いつつ歩いていたところ、今度は、「鈴木家」という杭に寄りかかっている「バウムフェルト」という杭を見つけました。
昔は、境界を示す杭に所有者の名前を書いたようです。 ちょっとした歴史を刻んでいるようで、おもしろい発見でした。
今の杭は、プラスチックか、コンクリート製で、てっぺんに×と印がしてあるだけで、あまり面白くないですね。 時々、街角で「世界が平和でありますように」と書かれた杭が立ってますが、時々、「境界を大切に」という貼り紙を見ることがあります。 世界平和を願うのは分かるとしても、境界の大切さをあえて訴えようとするのはどうして? と思っていたのですが、この杭というのは意外に重要なもので、測量をして、杭を打ってもらうだけで、30万円もかかるのだそうです。また、この杭の位置ひとつで、隣近所のもめ事が起こったりするわけなので、工事中にたまたま杭が抜けてしまったとしても、そこら辺に放り投げないで! 実は大事なんだから! という主張が「境界を大切に」には込められていたのですね。
さらに歩くと、「鈴木」という杭と「ロード」と書かれた杭が道端に立っていました。これは、ロードさんの土地の目印なのか、はたまた、ここから道です、というメッセージなのか、謎が深まります。
細く長い階段が続きます。 息を切らせつつ立ち止まると、新緑のあざやかさに、疲れをしばらく忘れます。 すると、先に階段を上っていたSさんが言います。 「俺だったら、見晴らしがいいように、ここら辺の木、全部切っちゃうのにな」 「そういう人は、軽井沢に住んじゃいけないよ」 私は息を切らせながら言います。
階段の突き当たりに鳥居があり、鳥居をくぐると、オルガンロックです。 柱状になった岩が、天に向かって立っています。外国人たちは、その石の様子をオルガンの鍵盤に見立てて、「オルガンロック」と呼んだのでした。 そこからは、軽井沢駅に続くメインストリートが見渡せます。 観光客でひしめいている旧軽井沢も、上から見ると、ほとんどが森に囲まれていると分かります。ツキノワグマも、二ホンリスも、ウグイスも、血統書付き高級犬を連れた奥様も、すべてを包み込んでいる軽井沢の森です。
1時間ほどのハイキングの後は、旧軽井沢通りにあるジェラート屋さんで、使ったカロリーをたちまち補給してしまったのでした。
豊かな自然と、外国人達に愛された歴史、そして美味しい物や都会の空気も同時に味わえる軽井沢。草津や北軽井沢とはまた違った魅力があります。軽井沢には、人が作り出した絵になる風景が多いのです。まったくの自然ではないけれど、住む人達の街作りのセンスが感じられる場所なのです。
堀辰雄は、軽井沢を舞台にして「美しい村」という小説を書きましたが、確かにここは「美しい自然」というよりも、長い間、人が作り上げてきた理想郷、「美しい村」という気がします。
みつばちはえらい。
先日、旧軽井沢でハチミツ三昧を体験しました。旧軽井沢沿いには何軒か、ハチミツを専門に扱うお店があるのですが、杉養蜂園のハチミツソフトクリームがおいしいらしいのです。 少しクリーム色のソフトクリームは、ほのかにハチミツの香りがする、やさしい味わい。ミカドコーヒーのモカソフトと並ぶくらいおいしい! と感動です。 スタッフのお姉さんは、「これがおいしいんですよ!」と、さらに試食のハチミツをトッピングしてくれます。
お店の中には、数人の女性客が、ミツロウの試食をしています。
「ミツロウって食べられるのですか? ロウソクにするものだと思っていました」
(私も食べたいんですけど・・・)と、心の中でつぶやきつつ、お店のお姉さんに聞いてみました。
「食べてみますか?」
私の心の声が聞こえたのか、すかさずお姉さんはミツロウを、スプーンで持ってきてくれました。 ミツロウというのは、蜂が、巣に貯めた蜜に蓋をするの為に分泌するロウで、巣の一部分ですね。 ロウソクや、化粧品、ワックスの材料になるそうです。
味は、はちみつにプラスチックの破片が混ざっているような味。きっと、ロウソクを食べるとこんな味がするんだろうなぁ。ミツロウ自体は何の味もしないのです。
この日は、花粉の試食もしました。ミツバチが蜜を取る時に足に付けてくる花粉です。 見かけはふりかけ「のりたま」の卵部分とそっくりで、ぱふぱふした食感。 味は、「きなこ」に似ています。花粉は栄養があって、サプリメントとして食べる人も多いそうです。
私はなんとなく、ハチミツというものは、みつばちが集めた花の蜜を、人間が加工して作るのだと思っていました。が、ハチミツは、加工どころか、加熱も殺菌もしていません。 人間がハチミツに関わる部分は意外に少なく、みつばち達を花のたくさんある場所に連れて行くこと、できあがったハチミツを漉し取ること、この二つが人間のお役目だそうです。みつばち達のマネージャーが養蜂家なのですね。
みつばち達によるハチミツ製造工場は、完全な分業制です。 生後3日目から働きはじめる働き蜂、毎日2000個もの卵を産み続ける女王蜂、そして、働くこともせず、役目は生殖活動のみというオス蜂がいます。 ハチミツの不思議なところは、ハチミツはミツバチの体内で作られるということです。花の蜜を集める働き蜂は、お腹の中の「蜜胃」という所に蜜をたくわえます。巣に帰る間、体内の酵素と混ざって、蜜に化学変化が起きます。 巣に戻ると、待機している仲間のみつばちに、口移しで、蜜を預けます。受けとったみつばちは、呼吸を繰り返して蜜の水気をとばすのです。みつばちの体を二回通過することで、花の蜜は、ブドウ糖と果糖に分解されます。
この作業が、朝から日暮れまでえんえんと続けられるのです。ハチの口移しって、一滴にも満たない量でしょうね。気が遠くなりそうです。 けれど、これだけではまだ、あのトロリとしたはちみつにはなりません。この時点では蜜の水分が多いため、手の空いたみつばちが、羽をばたばたさせて、蜜の水分を蒸発させるのです。あのちびっちゃい羽で。 濃度が80パーセントくらいになると、ついにハチミツが完成! と、思ったのもつかの間、そのおいしいハチミツは人間がいただいてしまうのでした。
このみつばちと人間の関わり合いは紀元前から変わらないそうです。実際、みつばち達は、自分たちが生きていくのに必要な分以上のハチミツを作るそうで、人間や、熊などの分まで、余分に作るそうです。メリットはなさそうなのに、人の分まで働いてしまうみつばちに、尊敬の気持ちすらわき起こってきます。
杉養蜂園のお姉さんによると、一匹のみつばちが、一生働いて作るハチミツは、ティースプーンにたった一杯分なのだそうです。 たった一口が、みつばちの退職金に相当すると思うと、もったいない気持ちになってきます。
ひとつぶのお米の中には、八十八人の神様が宿ると言いますが、スプーン一杯のハチミツには、一匹のみつばちの全生涯が宿っているということを、忘れないでいようと思ったのでした。
光と闇のクリスマス
今年のクリスマスはどんな風に過ごしましたか? 軽井沢では、毎年クリスマスの時期に、ウィンターフェスティパルが行われます。 教会、喫茶店、駅など、様々な所でイルミネーションを灯し、クリスマスをお祝いするのです。 この時期は、ブルーベリーのお客さんと一緒に、夜のイルミネーションツアーに出かけます。
軽井沢のクリスマスといえば、まず「恵みシャレー」です。 教会が主催しているだけあって、クリスマスは、キリストのお祝い、ということを思い出させてくれます。
車から降りると、動くトナカイ達や、スノーマン達が出迎えてくれました。 軽井沢の夜は、ネオンの光りがないだけに漆黒の闇です。 その中で、キリストの誕生を模った人形が、オレンジ色や、緑のイルミネーションの中で、幻想的な光を放っています。 クリスマスと言えば、日本ではツリーやリースが一般的ですが、ドイツでは、キリストの生誕を現した大がかりな飾り物が多く、それによって子供達がキリスト教を自然に学べるようになっているそうです。
雪の早かった今年の軽井沢は、ホワイトクリスマスになりました。 ふわふわと舞い落ちる雪をじっと見ると、一つ一つがちゃんと、ツリーの飾りの形をしているのです。 こんな繊細なものが、空からたくさん降ってくるなんて、何だか魔術的な気がします。
ホールから、クリスマスソングが聞こえてきました。
「ホワイトクリスマス」
私は今までこの歌を、12月のデパートの中や、テレビでしか聞いたことがありませんでした。 けれども、一年で一番夜が長くて寒い冬至の頃、雪の中でこの曲を聴いた時、この曲を初めて聴いたような気がしたのです。 耳から入ってきたこの歌は、体に入って温かく広がりました。
音も、温度を持っているのではないでしょうか。 「ホワイトクリスマス」 は、熱いというより、遠赤外線のように内側から温める音楽なのだと思います。
恵みシャレーの中に入ると、シナモンとリンゴの香りがする紅茶を配っていました。 公共の場で配るものといえば、大体甘酒や、日本酒ですが、さすがは軽井沢。配るものもおしゃれです。
紅茶と音楽で温まった私達は、旧軽井沢のロータリーへ移動しました。 ここには軽井沢の町を模ったミニチュアの町と大きなツリーがあるのです。 運がいい事に、ツリーの前にはサンタクロースがいました! 手を振ると、 「メリークリスマス!」 と、声を掛けてくれます。 サンタさんにそう言ってもらえると、なんだか縁起がいいような気がするのですよね。
「一緒に撮ってもらえますか?」 ツリーの前でサンタさんと一緒に記念撮影です。
サンタさんの、世を忍ぶ仮の姿は、軽井沢にある日本語学校の生徒だそうです。本来の姿でお会いできて幸運でした。 サンタさんのお供は、トナカイではなくて、台湾からやってきた妖精さんが二人。
そういえば、サンタの橇を牽くトナカイは、9頭いて、それぞれにちゃんと名前がついているそうです。
ダッシャー、ダンサー、プランサー、ビクセン、コメット、キューピッド、ダンダー、ブリッツェン
初めは、この8頭だったのですが、 「赤鼻のトナカイ」の大ヒットにより、9頭になったのです。
赤鼻のトナカイ「ルドルフ」は、サンタ達を見送る群衆にいたところ、サンタに、 「君、ちょっと我が社で働いてみない?」 と、スカウトされたそうです。
赤鼻がライトの代わりになる、という理由があるにせよ、いきなりチームの先頭ですよ。 他のトナカイ達の嫉妬はなかったのでしょうか? その後、いざこざもストライキもなく、仲良く走っているところを見ると、サンタクロースは、よほど人望のある人だったのでしょうね。
そして、私達の車は軽井沢で一番大きなツリーのある矢ヶ崎公園へ。 大きな池にかかっている橋にも、サンタやトナカイなどのライトアップがされています。 ジャングルジムには大きなリボンがかけられ、巨大なプレゼントに変身していました。 青い光で縁取られたツリーは、大小の金銀のボールでシンプルに飾り付けられています。 近づくと、視界が色とりどりの光で覆われて、現実のものではないような感じです。 昔、絵本で見た、マッチ売りの少女の前に浮かび上がったクリスマスの風景を思い出しました。
ツリーの大きさから言えば、ディズニーシーで見たツリーの方が大きくて、飾りも派手でしたが、私には、青い光りに包まれた軽井沢のツリーの方が、何十倍もきれいに見えました。 何が違うのだろうと思って空を見上げると、背後には大きな闇がありました。全てを吸い込みそうな深い闇に、砂粒のような星が光っています。
都会には、豪華なツリーや、目を奪われるディスプレイや、選びきれないほどたくさんのケーキがあふれています。 けれども都会には自分の指先が見えなくなるような夜の闇も、雪の結晶が肌に触れる、やわらかくて冷たい感触もありません。
闇があれば、一本のロウソクでも明るく、しんしんと降る雪の中では、分け合って飲む紅茶でも温かいのです。 悪人が善人のすばらしさを引き立てているように、軽井沢のクリスマスを美しく彩っていたのは、闇や、夜や、雪だったのだと思いました。 軽井沢のクリスマスは、お祝いの気分と同時に、静かな気持ちを運んできてくれました。
軽井沢高原文庫
堀辰雄や有島武郎、室井犀星、川端康成、芥川龍之介、立原道造など、軽井沢にゆかりの深い文人たちの直筆原稿など約200点を展示しています。
「深い霧」「病気療養中の美少女」「静かな散歩道」 多くの人出でにぎわう軽井沢のイメージと同時に、軽井沢には、いつも「静」のイメージがあります。そのイメージを生んだのは、堀辰雄の小説によるところが大きいのではないかと思います。
★軽井沢高原文庫ホームページ
堀辰雄と軽井沢の出会いは、一高生だった大正12年、室生犀星に誘われ初めて軽井沢を訪れたことに始まります。以後毎夏のように訪れ、「ルウベンスの偽画」「美しい村」「菜穂子」など軽井沢を舞台にした小説を多く発表しました。
そんな静かな古き良き時代の軽井沢を感じさせてくれるのが、軽井沢高原文庫です。この敷地内には、堀辰雄の山荘[1412番山荘]があります。これは、小説「美しい村」にも描かれている山荘で、もとは旧軽井沢にありました。小さな木造の山荘に入ってみると、小説の世界そのまま、病弱な少女がひっそりと住んでいそうな雰囲気です。堀辰雄は昭和16年に購入、昭和19年まで毎年初夏から秋にかけて滞在しました。その後、画家の深沢省三、紅子夫妻が夏のアトリエとして使用していました。
また、野上弥生子の書斎兼茶室も、北軽井沢から移築されて見ることができます。藁葺き屋根の小さい家で、円い窓や縁側に風情を感じます。室内にいても、野原に佇んでいるような気持ちになる家です。ここで、野上弥生子と高浜虚子は、月を眺めながら「ホトトギス」の話をしたそうです。ほとんど物らしい家具もなにもない家ですが、それがただの殺風景ではなく、計算された質素に感じます。 住んでいる人の品性を感じさせる家だと思いました。
高原文庫の道を挟んで反対側に、「一房の葡萄」という喫茶店がありました。古い家が軽井沢の木々にとけ込んでいてとても素敵な建物です。 「一房の葡萄」というのは、有島武郎の小説からとった名前で、有島武郎の別荘「浄月庵」を移築したものでした。一階は喫茶店で、二階は軽井沢高原文庫との共通券で入れる展示室になっています。
何かしっとりとした空気を感じる家だなぁ、と、心地よく展示を見ていたのですが、実は、この別荘で有島武郎は、愛人と共に自殺したのだそうです。 そう思うと、この建物の持つ重厚さ、影のようなものが、余計に増したような気がしました。
丸山珈琲
軽井沢には数多くの喫茶店がありますが、私の一番のおすすめは丸山珈琲。コーヒー業界では知る人ぞ知る、自家焙煎コーヒーの喫茶店です。
ワインにおけるソムリエを、珈琲界ではカッパーと呼ぶそうですが、丸山さんは、日本でも数少ないカッパーの一人なのです。このコーヒーの味を審査する能力を生かして、世界各国に豆を買いに行き、厳選された豆を仕入れ、自家焙煎して出す。ほんとうに贅沢な飲み方です。
よく、店内に入った途端にコーヒーの良い香りが・・・。 なんて言いますが、丸山珈琲は違います。駐車場に入った途端、珈琲の香りに包まれるのです。店内は、シックで落ち着いた雰囲気。大きな暖炉や陶芸の工房もあって、親戚の家に来たようなくつろげる空間でありながら、センスの良いインテリアは参考になります。
季節によっていろいろなコーヒーがありますが、ブレンドは500円で、お代わりのポットまでついてくるのが嬉しい。コーヒー通の人も、そうでない人にも是非味わって欲しいコーヒーです。 チョコレートケーキなど数種類あるケーキもおすすめですよ。
ミカドコーヒー
軽井沢で老舗の喫茶店といえば、ミカドコーヒーです。
ミカドコーヒーの名前が広く知られるようになったのは昭和44年に発売された「モカソフト」というヒット商品によるところが大きいのではないかと思います。
かのジョン・レノンとオノ・ヨーコもここの常連で、モカソフトを食べながら旧軽井沢銀座を散策したそうです。それが「食べ歩き」の元祖になったという話もあります。
このモカソフト、ドリップしたての珈琲の香りとほのかな苦みがあり、さっぱりとした口当たりで実においしいのです。
旧軽井沢にミカドコーヒーがオープンしたのは、昭和27年。
戦後、珈琲がようやく皇族、外交官、文化人の飲み物から一般人に広まってきた頃でした。けれどもまだコーヒーは高価な飲み物。1カップ60円位でした。 その当時、ミカドコーヒーは、日本橋室町にスタンド形式で、半額の値段でコーヒーを販売しました。今で言うドトールコーヒーなどのはしりであり、コーヒーの普及に大きな役割を果たしました。
けれども、今のミカドコーヒーは、安いフランチャイズの形式をとっていません。ブラジルやコロンビアから厳選された豆を使って様々な種類のコーヒーを販売しています。
軽井沢旧道店に30年勤めた著者がによる「軽井沢ミカド珈琲物語」という本が、文芸社から出版されています。ミカドコーヒーを訪れたたくさんの著名人のエピソードを知ることができますよ。
数年前に、軽井沢アウトレット内にも、新しくミカドコーヒーがオープンしました。こちらの軽井沢ショッピングプラザ店でも、モカソフトを味わえます。
ところで、このモカソフト。店内で食べるのと買って歩きながら食べるのでは値段が違います。 モカソフトねらいだったら、280円の安い値段で買えるお持ち帰り用がおすすめ。 のんびりしたい人には、店内で、レトロな雰囲気を味わいながら、昔からの製法で作られている濃厚なチーズケーキをいただくのもいいですね。
ペイネ美術館
南軽井沢・軽井沢タリアセンの中にあるペイネ美術館を紹介したいと思います。
塩沢湖のほとりを歩いてゆくと、朱色の木でできた家が現れます。ここは、建築家のレーモンドが昭和初期に建てた「夏の家」と呼ばれるアトリエ兼別荘を移築したものです。
庭には、バラに囲まれた恋人達の像がありました。この山高帽の男の子とかわいらしい女の子は、誰でも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
★軽井沢タリアセンホームページ
フランスのパリに生まれたレイモン・ペイネは、愛と平和をテーマに恋人達の絵を描き続けた画家です。ここには、ペイネの描いたポスターや、恋人達の絵、皿、人形などが展示されています。どれを見ても暖かく、添えてある言葉にはユーモアがあって見ている人を暖かい気持ちにさせてくれます。
暗さを少しも感じさせない絵ですが、これが描かれた時代は、第二次世界大戦中なのです。 ペイネは、世の中の不幸な人、悲しい人に明るさ、優しさ、陽気さを少しでも与えると同時に人生の中の汚れたみにくい部分を少しでも忘れることができたら、と考えていました。
確かに、ペイネの絵は見ている人を別世界につれていくような、ほんの一瞬、自分がいる場所を忘れてしまうような力があるのです。戦争というすさんだ時代の中で、ペイネの絵は、たくさんの人に光をなげかけたのだろうと思います。
南軽井沢は、比較的静かで落ち着いた場所ですが、その中でも湖もあり、バラ園もあるこの場所自体、現実の喧噪から遠く離れた世界のように思えます。本当にペイネにぴったりの場所だなぁ、と感じました。 また、美術館の一番奥の部屋が、とてもいい雰囲気です。 ガラス窓から見える明るい庭の緑や、古風な籐家具、オレンジ色の明かりに身を沈めてくつろいでいると、自分が、外国人宣教師達がたくさんいた頃の軽井沢の風景にとけ込んでしまったような気持ちになります。
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